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ラブホテルなんてどこにでもある。
手近なところに入ってみた。
もちろん入ったこともない。
初めて入る。
よって部屋もなんの基準もなく、適当に空いているところにした。
水浸しという表現がよく似合うヤマンバは部屋に入ると、慣れているかのようにバスタオルを見つけ出してきて、そのままバスルームへいった。
大きなベッドとソファーとテレビ。
机の上に灰皿があったから煙草に火をつけて、小さな冷蔵庫の上のポットを見る。
横にティーバッグの緑茶と湯飲みを見て、俺はもちろんそれを淹れてみる。
ハンバーガーのドライブスルーには緑茶はない。
煙草を片手に緑茶を飲んで、ちょっと満足。
ポケットに入れていた財布とカギと携帯と煙草を机の上に置いて、ラブホ散策。
言っても、扉があるのはトイレと風呂くらいで。
たいして広くもない。
テレビにゲームやカラオケがついている。
どんなゲームができるのかどこかに説明書がないか探していたら、コンドームを見つけた。
もちろん俺が持っているはずもない。
つける気もない。
ぺいっとコンドームをゴミ箱に投げて、ベッドに横になって、メニューのようなものを広げてみてみる。
大人の玩具売ってますというような広告なんかもありつつ、テレビの説明も書かれていた。
テレビをつけて、ゲームをセットできたところでヤマンバがバスルームから出てきた。
横目でちらっと眺めて、何か違うものを見たような気がして、もう一度見る。
ヤマンバはバスタオル一枚、体に巻いているだけ。
メイクはもちろん落ちていて、ヤマンバじゃなくなっていた。
バケモノとは言わないが、どこかヤマンバに見慣れてきていた。
普通なのに普通に見えない。
「……メイク落とせって言ったからちゃんと落とした。ブスって言いたいなら言えば?」
俺がじろじろ見たからか、機嫌悪そうに言ってくる。
そのまま俺の座るベッドに座ってきて、ベッドの上を四つん這いで這うように俺に近づいてくる。
濡れた金髪は後ろに撫で付けられていて、その顔がよく見える。
決して目は大きくない。
鼻も高いわけじゃない。
そこらへんにいる普通のノーメイクの女。
俺は剃られたようなない眉を親指の腹で擦ってみる。
眉毛がない人間の顔は奇妙だ。
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