Dolly

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この場であの1週間の話はできたものじゃない。 俺の親もいるし、アカネの親もいる。 俺は自分の親のそばに立って、親同士が年始の挨拶をしているのをよそに、アカネばかり見ていた。 本当にそうなのか自分を疑ってみる。 どれだけ疑ってもアカネにしか俺には見えない。 メイク落としてもらわないとはっきり判断しきれない化けようだが。 あとはお若いお二人で…みたいな機会をつくってくれるのを待っている。 親同士はくだらない長話を続ける。 「父さん、母さん。そちらのお嬢さんと僕は席をはずしてもよろしいでしょうか?」 俺は優等生面して、親に自分から二人になれるように言ってみた。 終わらないうえに、存在忘れられた会話のように思うから。 「あぁ、そうだな。少し寒いが庭にでもいってきなさい」 親も上品ぶって俺に言ってきて。 俺はアカネをエスコートするように手を差し出す。 アカネは俺の手に手を重ねて立ち上がり、その晴れ着の上にアカネが着てきたコートをかけて、アカネをその場から連れ出した。 庭では俺が凍える。 車庫にいって、自分が乗ってきた車に案内してやった。 アカネはおとなしく助手席に座る。 「で?小平茜、おまえは浮浪者だったんじゃないのか?」 車を出すでもなく聞くと、アカネは俺を見る。 「要のマンションに逃亡しよ?」 その声も話し方もアカネにしか思えない。 「俺も逃亡したいけど、三が日は実家にいなきゃならない。……ヤマンバ、どういうことだ?これは」 「お嬢様にヤマンバとは失礼な。……金ないし、家もないし、買ってくれる男も見つからないし。渋々、実家に戻ってやった。そしたら、要が言っていた見合い写真出てきて、うんざり。また家出するつもりだから、要は気にしないで」 「説明になってないっ。おまえが小平茜なのかよっ?」 「誰?それ。しらなーい」 ぷちっときた。 アカネの顔を掴んで揺らしてやる。 「ぎゃああぁっ!メイク落ちるーっ!すっぴんブスなんだからやめろーっ!」 喚くそれはアカネしかない。 どうやら俺は婚約者に惚れたらしい。 なんかとんでもないお嬢様みたいだが。 探すまでもなかったらしい。 それを思うと腹立たしい。 気のすむまでアカネを虐めてやった。 晴れ着姿のまま、車の中でセックスという虐め。
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