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男も女も釣糸を垂らしている。 年上に引っかかってもなと思って同年代を見てみる。 どれに釣られてやるかなと募集文を眺める。 女より男のほうが釣れなさそうだし、男に釣られてやろうかとしてみる。 女を求めている相手にはもちろん嫌がらせだ。 女のふりをして釣ってみて遊んでいる。 釣られているのはどっちなのか。 こんなものは楽しんだ者勝ちだと思う。 俺は嫌がられて楽しむ、根性腐った奴だ。 釣れる。 釣れすぎてつまらなくもなってきて、女のほうを釣ってみることにした。 こっちは釣糸垂らして釣れる獲物が多いのか、なかなか難しい。 これ、釣る気ないだろというようなものに狙いを定めてみる。 どれがいいかなと眺めて、それに目が止まった。 援助交際求めているようなやつ。 しかも相手に不細工で童貞であることを求めているから、釣って楽しむつもりなのかもわからない。 いや、馬鹿にして楽しむつもりなのか。 金を出せば買えると思ってるのかと。 馬鹿にするつもりなら、そこまで最初から見え見えの釣り針見せるなとも思う。 馬鹿だなと思いながら、これに決めた。 まずはメール。 俺も童貞だし、間違ってはいない。 金で買って欲しいなら、買ってやらないこともない。 俺を不細工とみるかどうかは相手の好み。 釣り針見えすぎて、獲物も少なかったらしく、思ったとおり返事がきた。 いくらで買える?と聞いてみた。 『3万』 本当に買うとすれば高い。 出してやらないこともないが。 『1週間5万は?』 『毎日?』 『毎日セックスなんてしないし。2回ぶん』 たぶん。 値切ってやっただけ。 1週間ってところで半額以下になってる。 1日1万もならない。 しかもその場限りで終わらせない。 俺なら断る。 『わかった。今から会える?電話していい?』 簡単に了承されたことに、やっぱり釣りだなと思いつつ、釣られてやることにした。 いい時間潰し。 本当は男だったり?なんていう疑いも電話で消される。 相手の声は女の声。 初めて話すのに躊躇いもなく馴れ馴れしい。 『何歳?名前は?』 「21。荻田」 『下の名前。あたし、アカネでいいよ』 「要」 『カナメ?…カナメってどんな字?』 なんていう、俺にとってはどうでもいい話。 釣ってくれるなら待ちぼうけさせられたい。
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