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曇り空、こぼれ落ちる水滴たちは衰えを見せず、転校生から不吉な視線を浴びせられるも、涼也の気分は悪くなかった。
待っていた魔導実践の授業がきたからだ。
「じゃ、あたしは更衣室いくね」
「わざわざ言わなくてもいいっての」
「も~! バカタレ!」
悪態を吐いて教室から去っていったレナンを見届けて、自分が一体なにをしたんだと首をかしげる涼也。とりあえず、学校指定である魔導実践用の服(言ってしまえば体操着)に着替え、室内演習場へと向かう。
軍隊本部の直轄である為、体育館代わりに学園敷地内でも建築されたらしい。
「今日は悪友二人がいないようだね?」
演習場へ向かう途中、背後から声が投げかけられた。振り向かずとも声の主はわかっていた。
「……グリムか、片方は悪友かもしれないけど、もう一人はどう考えても優等生だろ?」
「ふ、違いないね。で、今日の魔導実践なんだけど……」
鮮やかな緑色の髪、その前髪部分を弄りながら、グリム=ウィンガードは悠々と語りだす。しかし、その途中で涼也は振り返り、
「悪いけど、お前とはまだやらないよ」
きっぱりとそう言って、また前を向き歩を進める。
「何故?」
「お前が一番わかってるはずだろ」
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