上位争奪試験編

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「涼也、遅いよー」  演習場に入るや否や、レナンが声をかけてきた。心なしかいつもに増して話しかけてくる頻度が多いなと、涼也は思った。 (そうか、いつもの二人がいないからか)  先ほど、グリムに悪友と称された二人の姿が脳裏に浮かぶ。片や体調不良、片や朝の占いで事故率が90パーセントだったから休むとのことで、後者に対してはリヴォルタ教官もご立腹である。  その教官様であるが、現在涼也たちの前にいる。 「さて、そろそろ時間だな」  そう言って授業の開始を促すと委員長が「整列」と声をあげた。リヴォルタ教官は魔導実践を担当している。やはり戦闘に関してはそのスペシャリストの教えが良いだろうみたいな適当な理由で国の偉い人がリヴォルタに話を持ち掛けたようだ。  礼を終えた後、互いに決めた相手と実践形式の戦闘を行ういつも通りの魔導実践の授業が始まった。 「ふぎゃあ!」  情けない声に少々苛立ちを覚える。が、演習場の床に寝そべる金髪少女の姿はなんとなく猫っぽくて愛らしい。涼也はそう思ってしまった。そして、仕方なく倒れ伏す少女、レナン=スティグナーに手を差し伸べた。 「えへへ、面目ない」  魔導実践の授業で指先ひとつ掠らずにやられたにしては、あまりにも緩い態度でレナンは涼也の手をとり起き上がる。  なんというか、彼女はあまりにも弱い。もとより運動音痴で、体術はからっきし。腕を振り回しながら迫ってくるような、そんなレベルだ。にも関わらず使ってくる魔法は小学生で習うような、簡単な魔法。純正魔法を使う姿は、涼也もまだ見たことがなかった。  
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