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「……悪いな。勝手にしょぼくれちゃっててさ」
「ううん、いいの。あたしの為に落ち込んでくれてたんでしょ?」
涼也はそれ以上、言葉がでてこなかった。なんだかんだで彼女は周りがよく見えている。レナンは笑った。両の手を広げ、涼也に伝える。
「あたし、頑張るから。もっと強くなるから。一緒に進級するし、魔導士の資格だって今年中に取るもん!」
「いや、それは無理だろ」
さらっと本音が出てしまった。慌てて訂正しようとする涼也の口にレナンの人差し指が押し付けられた。どうにも、殺意や敵意がない相手の不意打ちには、涼也は反応できないようだ。
「あたしは、やるよ。だから安心して。ね?」
彼女はそう言った。涼也は、黙って頷くことしかできなかったが、それで十分だとも思った。
そしてなにより、彼女のことを信じたいと、そう思えた自分に喜びを感じていた。
「よし! お前は今後、魔導実践の授業は俺と組め! 戦闘のなんたるかを叩き込んでやる!」
「ええー、痛くしないでよ?」
「甘えんな」
二人の距離が縮まった、とある夕暮れの出来事だった。
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