第1章 新大陸へ向けて

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 翌日、カプリント平原にガルシア軍が出現した。人も、馬も、重々しい甲冑を身につけた重装騎士の群れである。かつては無敵無敗を誇ったこの軍勢は、見方によっては死神の大群と評することもできるかも知れぬ。だがシャイロの目には、動く銀色の的にしか見えなかった。 「諸君、ガルシア軍は思い知るだろう。自分たちがもはや、決してガリアに勝てぬ惰弱な一群に成り下がったという事実をな!」  シャイロは自信たっぷりに宣言し、全軍に展開を命じた。  銃を持った歩兵が横列展開し、大砲に弾が込められた。飛び道具を持たぬガリア騎士団は後方へと追いやられ、キールはシャイロにいわれたとおり、味方の戦いを見守るほかなかった。  そして正午、ラッパがけたたましく鳴り響き、ガルシア軍が突撃を開始した。重々しい地鳴りにも似た馬蹄を轟かせながら、一〇万の大軍が平原を埋め尽くす勢いで前進する。シャイロが攻撃を命じたのはその直後だった。 「撃てッ、撃てッ、撃って撃って撃ちまくれッ!」  それは感情に任せた命令だった。シャイロは戦う前から勝利を確信しており、早くソレを現実のものとしたかったのだ。  数万丁の銃が火を吹いた。二五〇門の大砲が轟音を響かせる。シャイロはこの戦いで三段連射方式を採用しており、ガルシア軍への攻撃は一瞬の隙もなく波状的におこなわれた。  凄まじい火力による攻撃。しかも一方的だ。ガルシア軍からの反撃は一本の矢すらない。シャイロは勝ったと思った。  ところがである。ガリア軍の猛攻を受けながらも、ガルシア軍はまるで怯んでいなかった。それどころか、最初の勢いのまま前進を続け、むしろさらなる勢いを加速させてガリア軍に近づいてくるではないか。しかも、損害がまるでない。シャイロは我が目を疑った。  実はガルシア軍、未だ銃の開発には成功していないものの、銃への対抗策は万全に練っていた。ガリア軍の銃は確かに強力ではあるが、過去の戦いから考察を重ねた結果、鉛弾が通らぬ甲冑の強度を突き止めていたのである。
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