序章

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 そして二つ目の出来事は新大陸の発見である。それまで大陸では、しばしば西の海の向こうに未知なる陸地があると噂されていたが、それが現実として確認されたのであった。  発見の功労者の名はクオレ・デュナミスという。彼は貧しい家庭で生まれ育ち、幼少期は鉱山での労働を強いられ、少年期は路上生活を余儀なくされたという悲惨な過去を持つ。しかし、クオレは軍人としての才能に恵まれており、一四歳で軍に入隊してからは短期間のうちに頭角を現し、若干一八歳の若さでガリア帝国の精鋭ガリア騎士団の長を務めるにいたった。そしてデボーラの戦いではガルシア軍の猛将レッケンベルを討ちとるという武勲を立て、その功績によって黄金境探索を皇帝から許可された。  クオレの家庭が貧しかった理由は、冒険家を自称する父親のせいであった。クオレの父は西の大洋の向こうにあるという黄金境を探すため、家や畑を担保に多額の借金を背負って海を渡り、帰らぬ人となった。戻ってきた同行者の話によると、父親は確かに黄金境を発見したのだが、道中で命を落としてしまい、黄金を手に入れることができなかったという。クオレは父親の行動に憎悪しており、自ら黄金境を探しその黄金を手にすることによって父親への復讐としようとしたのである。  クオレは親友のアラン・カストロ以下、一八五名の部下を率いて海を渡り、二ヶ月の航海を経て、新大陸に辿り着いた。そして密林を踏破し、ついには黄金によって彩られた巨大な石造りの都市を発見したのであった。  黄金境は現地ではクイラと呼ばれ、そこはインティと呼ばれる現地の王国の首都であった。インティでは当時、生け贄の儀式を巡って内乱が勃発しており、肯定派の王国と否定派の反乱軍による激しい戦いを繰り広げられていた。 クオレはこの状況を好機と捉え、戦況を見極めたうえで敗北寸前の王国側に加担した。陥落した首都に単身で乗り込み、捕らえられていた女王を救い出し、彼女と同盟を結んだ。勝利の報酬として莫大な黄金を要求して。
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