序章

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クオレが率いる一八五名の探索隊は、ガリア騎士団から選りすぐられた精鋭中の精鋭であり、銃や鉄製の剣で武装していた。それと比較して反乱軍の兵士たちはほぼ全裸であるうえ、武装も黒曜石の槍や木の盾だけであり、勝負は一方的に決着した。反乱軍は粘りに粘ったが、彼らはガリア人によって駆逐されてしまったのである。  こうして反乱は、逆転の末、王国側の勝利によって幕を下ろしたのだが、事態はそこで終結しなかった。  古より伝わる伝承によると、インティはかつて、星の落下によって到来した魔物によって地獄と化していたという。魔物は血を欲し、人々を喰らい、国を破壊し暴れた。インティの人々は必死になって魔物と戦い、多くの犠牲を払いながらも、ついには呪術を使って封じることに成功した。インティでおこなわれていた生け贄の儀式とは、封じられた魔物を鎮めるための儀式であり、生け贄の血によって魔物の封印を強化するというものであった。伝承は続く。生け贄の儀式をおこなわなければ魔物が復活し、インティは再び地獄に変わる、と。しかし、長い年月を経て伝承は少しづつ薄れていき、生け贄の儀式の廃止を求める反乱軍の台頭につながっていったのであった。  クオレはその伝承を耳にした時、最初、バカバカしいと思っていた。だが、反乱軍の粘りによって生け贄の儀式がおこなえなかった途端、封印が解け、魔物が復活し、暴れはじめたのだ。巨大で異形な魔物を目にした瞬間、さすがのクオレも言葉を失った。  血を欲し、暴れ狂う巨大な魔物に対し、インティの民は逃げ惑った。クオレも目の前で発生した非現実的な光景を目の当たりにして一瞬、逃げ出そうとしたが、彼は踏みとどまって戦うことを決意した。魔物復活の責任の一端が自分にあると思い至ったからだ。  クオレは決死の覚悟で魔物に挑み、無数の傷を負い、大量の血を流しながらも奮戦し、仲間の援護やインティの呪術に助けられながら、ついには魔物を倒すことに成功した。インティの民はクオレらガリア人に深く感謝し、その礼として約束通り大量の黄金を彼らに送った。
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