第1章 新大陸へ向けて

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 新生ガリア帝国は、大陸の西に位置する大国である。国土の面積、人口、経済規模、保有する軍隊の数などを含めて総合的に判断した場合、大陸においては北のガルシア大帝国、東の東方国家、南の太陽皇国に次ぐ四番目の位置にくる。一二の州からなり、老若男女をあわせた公称の人口は一億四千万人、常備兵数は五〇万人を数え、首都は帝都グロイツェンである。  ガリアはかつて内乱国家と呼ばれていた。大陸暦一○九八年に神聖ガリア帝国が崩壊すると一二の国に分裂し、およそ一〇〇年間に渡って血で血を洗う泥沼の内戦を繰り広げてきた。しかし、一二〇七年にガリア帝国中興の祖と呼ばれるグレン・ハロルドが登場すると、ガリアは瞬く間に再統一を果たし、新生ガリア帝国として生まれ変わった。  現在の皇帝は中興の祖グレン・ハロルドより数えて一二代目にあたり、彼と同じ名を持つため、グレン・ハロルド二世と呼ばれている。在位期間はすでに二五年に達しているが、年齢はまだ五〇台前半であり、あと一〇年は皇帝としての地位に留まるだろうと囁かれていた。グレン皇帝は野心家であり、新境地への開拓精神を有している。銃の開発やクオレ・デュナミスの新大陸発見の功績の裏には、彼の先見性が一役買っていたといえよう。  その皇帝のお膝元、帝都グロイツェンは大陸でも指折りの大都市であり、およそ一二〇万もの人々が暮らしている。帝都は一二の区画に分けられており、それぞれ独自の色があった。例えば、宮殿が属するシェスタ地区は貴族や大富豪などの上流階級の人々が暮らす街であり、逆にケロイト地区は日雇い労働者や路上生活者が数多くいる貧民街となっている。犯罪者もこの街に逃げ込むことが多い。ケロイト地区は帝都でもっとも治安が悪く、殺人や強盗などの巨悪犯罪が日常的に発生している場所だ。そのため、上流階級の人間はもちろんのこと、中流階級の人間や一般の庶民ですら滅多に近づこうとしない。
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