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沖田と分かれた後、涼花は土方を捜した。
(こんなの、あんまりだ…!!)
沖田から聞いた話では、山南は江戸に戻ると一筆残し、部屋の荷物もない。
近頃の様子から見て、これは間違いなく脱走だと新撰組幹部たちは判断した。
江戸に居た頃からの仲間である山南。
しかし、法度は絶対…
つまり、山南は連れ戻されたのち切腹。
何故、そんな酷な事が出来るのか
その気持ちで胸が張り裂けそうで、だけど不思議と涙は出てこず、これは土方に対して初めて感じた"怒り"であると、涼花自身も気が付いていた。
この時代の事は、理解していくつもりだった。
むしろ、それなりに理解し、馴染んだつもりで居た。
しかし…
(山南さんは、悪くない。きっと、今まで粛清されてきた人たちだって…悪くないっ!)
もう、時代がどうだ、なんて、この時の涼花の頭にはない。
どくん、どくんと動く心臓を気にする余裕すらない。
涼花は、近藤の部屋の前までくると、声もかけずに障子をあけた。
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