第五十章

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―――― 沖田と分かれた後、涼花は土方を捜した。 (こんなの、あんまりだ…!!) 沖田から聞いた話では、山南は江戸に戻ると一筆残し、部屋の荷物もない。 近頃の様子から見て、これは間違いなく脱走だと新撰組幹部たちは判断した。 江戸に居た頃からの仲間である山南。 しかし、法度は絶対… つまり、山南は連れ戻されたのち切腹。 何故、そんな酷な事が出来るのか その気持ちで胸が張り裂けそうで、だけど不思議と涙は出てこず、これは土方に対して初めて感じた"怒り"であると、涼花自身も気が付いていた。 この時代の事は、理解していくつもりだった。 むしろ、それなりに理解し、馴染んだつもりで居た。 しかし… (山南さんは、悪くない。きっと、今まで粛清されてきた人たちだって…悪くないっ!) もう、時代がどうだ、なんて、この時の涼花の頭にはない。 どくん、どくんと動く心臓を気にする余裕すらない。 涼花は、近藤の部屋の前までくると、声もかけずに障子をあけた。
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