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「…涼」
「……」
涼花の目にうつるのは、苦しそうな顔をした近藤と、こちらを見もしない土方。
「…どういう…事ですか」
少し震えた声で、涼花は尋ねた。
なんの事を聞かれているのか、近藤も土方も分かっている。
しかし、何も答えようとはしなかった。
近藤は、ずっと苦しそうな表情のまま、涼花を見ていた。
しかし土方は相変わらず、涼花の方をちらりとも見ないのだ。
その態度に、涼花は腹が立った。
考えるより先に、土方に向かって足は動ていて、
土方のそばまでくると、無意識に腕を掴んでいた。
「あんまりです!こんなの…ひどすぎる…ッ」
土方の腕を握る手に力が入る。
それとは逆に、涼花の声は消えてく。
涼花の口から洩れるのは、苦しそうな、嗚咽。
「…誰から聞いた」
やっと、土方は口を開いた。
「…そ、じ…」
沖田の名をやっと口にすると、それを聞いた土方はため息をつく。
その瞬間、涼花は腹の中に何か居て、それが喉の方へ向かって上がってくるような感覚を覚えた。
その何かは、すぐに涼花の口から出てきた。
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