第五十章

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「…涼」 「……」 涼花の目にうつるのは、苦しそうな顔をした近藤と、こちらを見もしない土方。 「…どういう…事ですか」 少し震えた声で、涼花は尋ねた。 なんの事を聞かれているのか、近藤も土方も分かっている。 しかし、何も答えようとはしなかった。 近藤は、ずっと苦しそうな表情のまま、涼花を見ていた。 しかし土方は相変わらず、涼花の方をちらりとも見ないのだ。 その態度に、涼花は腹が立った。 考えるより先に、土方に向かって足は動ていて、 土方のそばまでくると、無意識に腕を掴んでいた。 「あんまりです!こんなの…ひどすぎる…ッ」 土方の腕を握る手に力が入る。 それとは逆に、涼花の声は消えてく。 涼花の口から洩れるのは、苦しそうな、嗚咽。 「…誰から聞いた」 やっと、土方は口を開いた。 「…そ、じ…」 沖田の名をやっと口にすると、それを聞いた土方はため息をつく。 その瞬間、涼花は腹の中に何か居て、それが喉の方へ向かって上がってくるような感覚を覚えた。 その何かは、すぐに涼花の口から出てきた。
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