第五十章

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「…なに、ため息なんかついてるんですか」 「…あ?」 「おかしいでしょう!ねぇ、土方さん!おかしいよ!」 大きな声で、怒りを込めた言葉を口から吐き出し、土方の体を揺さぶった。 「山南さんは…今まで切腹してきた隊士の人たちとは!違うでしょう!」 「…………」 「ずっと…ずっと一緒に、ここまで来た人なのに…ッ!」 苦しそうに顔を歪める涼花に、土方は静かに答えた。 「ここまで一緒にやってきた、でも、脱走した。それが答えなんだよ」 涼花にそう言い放つと、土方は涼花の腕からすり抜け、近藤の部屋を出よう障子に手をかけた。 「………ばかだ…土方さんは、バカだ!!!」 涼花からの言葉を背中で受け止め、こちらを振り向かないまま、土方は近藤の部屋をあとにした。
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