第五十章

7/14
前へ
/745ページ
次へ
静まり返った部屋で、涼花の鼻をすする音が響く。 耐えきれなくなった近藤は、 「涼」 と、静かに名前を呼んだ。 しかし涼花はその声に応える事ができない。 目の前のこの男は、土方とは違いやけに落ち込んでいる。悲しそうに、しているのだ。 山南を切腹させる事に賛成した身で何故悲しそうにしているのだと、矛盾を感じて怒りがこみ上げてくる。 「失礼しました」 涼花は怒りを込めた言葉を吐き出し、部屋を出ようとした。 しかし、後ろから 「歳も、辛いんだ」 と、近藤の声が飛んできた。 その声に、涼花の怒りはまたこみ上げてくる。 近藤の方を振り返った時には言葉が口から出ていた。 「ふざけた事を言わないでください」 と…
/745ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加