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純は起き上がると俺にチョークスリーパーをかけてきた。よっぽど逃した魚に悔やんでいるようだ。
「隆てめぇ、万が一あの子のドラムが超上手くて他のバンドと組むなんてことがおきたら、お前をゆるさねぇからな」
ひたすら降参の意思表示に腕ををタップしたが、なかなか話さない
「まだだ、まだ許さんぞぉぉぉ」
純のドSな面はたまに出で来るともう俺は何もできない、まあそんな時はほぼ俺が原因で純を怒らせている時なのだから自行自得と言ってしまえばそれまでである。
放課後はあまり人がこないこの視聴覚室に扉を開けて入ってきた。
「おいおい、男二人でじゃれあう趣味あったのかよ。危なそうだからバンド入るの考えなおそうかな、いや逆に安全か」
純の腕の力が急に緩み俺は首から手を振り払い、呼吸を整えた。
「おいおい、ヴォーカルなんだからのどは大切にしないとダメだろ」
「あん?誰だあんた?」
黒髪のショートカット、目元はシャドーをびしっときめてあり、革のジャケットにショートパンツのロック好きのファッションに身を包む。
こんな気合いの入ったな女は俺の知り合いにはいない。
「まっったく、昨日会った人の顔忘れる程記憶力が低いのかよ」
いや、こんな荒い口調でこんな見た目の女一度会えば忘れる訳がない。
ましてや昨日.....必死に昨日の事を思い出そうとするが全くわからない、昨日始めて会ったと言える女なんて一人しかいない、しかしその女は目の前の女と真逆のタイプ。
いや、違うアイツは右ストレートを繰り出す時こんな感じの言葉使いだった。
純の方に目をやると彼も同じように思ったのか口をポカリと空けていた。
俺の視線に気づいた純は驚いたと、手を横にやりジェスチャーして答えた。
「どうだビックリしただろ?これでドラムのテクニックが本物ならバンドに入れてくれるんだろ?」
「悔しいが格好いいよ、まったく普段はあんな猫被りやがってあの長い髪ズラだったのかよ」
「昨日あの後切ったんだよ」
怒りのこもった蹴りが襲いかかる 。
「俺は本気なんだよ。お前らとなら最高のバンドが組めると思ってる。そのためなら変われるんだいくらでもな」
まくし立てる瞳は強く、顔は紅潮している
「隆、こいつヤバいな。やろうぜ3人で。」
彼女の本気具合に自分達のバンドが本当に見合っているのかと微かな不安を抱いたが、その反面にもっと自分もバンドに本気にならなければと鼓舞された。
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