10人が本棚に入れています
本棚に追加
仕事が終わり自宅への帰宅途中に一本の電話がなった。
かつてのバンド仲間の純からのものだと確認したが、疲れていたため電話に出ないことにした。
明日も仕事の俺には10時以降の飲みの誘いは苦痛でしかない。
もう俺も30歳だ、いつまでも若くない朝まで飲みあかし夢を語ることなんてできやしない。
家に着くとベットに横たわり缶ビールを開けパソコンを立ち上げる。
動画サイトで音楽でも聞きながら眠りにつこうとする。
ブルブルとまた携帯がなる二度目の電話相手はやはり純だった。
「なんだ、そんなに俺と飲みたいのか」
やれやれと携帯を取り今回は無視せず電話に出た。
「おう純どうしたんだよ。そんなに俺が恋しいのか?」
「なあ隆、落ち着いて聞くんだいいな」
「ん?なんだよお前らしくないなどうしたんだ」
いつもと違う友人の電話に困惑する。
「優歌が‥‥死んだ」
「は?死んだ?優歌が?いやいや、ちょっとそんな急に言われてもなあ‥‥。本当なのか?」
優歌は俺と純同じ年、死ぬには若すぎる年齢だ、急に死んだと言われもすぐに受け止められない。
「本当だ。睡眠薬過剰摂取による死亡だ、おそらく自殺だろうと思う。会ってお前と話たいんだが今から会えないか?」
「えっああ、ああ大丈夫だ。場所はいつもの居酒屋でいいか?」
通話終了のボタンを押した後「嘘だろ?」と呟き携帯をポケットに入れた。
バンドをやっていた時によく集まった居酒屋「昇り龍」
店に入るとすでに純が席に着いていた。
「よう、久しぶりだな」
純の返事は元気がなかった。テーブルに目をやるとブラックニッカロックが3つ席に並んでいた。
「お前らカッコつけていっつもこれしか頼まないから先に頼んでおいたぞ」
「サンキューな。」
献杯と静かに二人と飲み干し誰も口つけない余ったロックグラスを見つめた。
「ふう、だめだ俺はまだ信じられないんだ。2年前優歌に会った時は元気だったし、歌手として成功してるあいつが自殺するとは思えないんだ。 なあ、芸能界ってやつはそんなにたいへんなのか?マネージャーさん」
純の悲しみ果てている姿を見ても俺はいまだ信じられない、俺には悲しみが未だ沸いてこないんだ。
「明日の朝にはニュースでバンバン流れるしお前も優歌の姿を見れば現実に目を向ける。」
ああ、純はすでに現実を受け止め悲しみに押しつぶされる手前なのだとわかった。
最初のコメントを投稿しよう!