chemical

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3曲ほど立て続けに演奏したあと。 彼女は額と胸元にじんわりと汗を滲ませ、真っ赤な顔で戻ってきた。 降りたステージの向こう側で歌謡曲位しか知らないだろうオヤジ達が大きな拍手と今回も良かったぞ。と言った喝采が飛び交っていた 「やるじゃん。なんだよお前そんなスゲー声もってたのかよ」 「隆より全然上手かったぞ。」 横槍入れてきた純の言葉に少しイラっとしながらも無視して続けた。 「なあ、お前バンドで歌わね?」 「すまん隆。俺のジョークよお前は上手い!」 慌てて純が俺をおだてる。 「私もボーカルがしたいわけじゃないのよ! 気に障ったならもうここで歌わないから」 さっきまで気持ち良さそうにしてた優歌すらひどい慌てぶり。 「えっと、ああ。勘違いするなよ、勿論俺も歌うよ、ただ優歌とツインボーカルでつくり直したらよさそうだなーって」 二人が安堵するのがすぐにわかった 「いいじゃん、いいじゃん。よし優歌やるんだ! リーダー命令よ!」 「いやー私は本当に。隆の歌が一番好きだからあまりでしゃばりたくはないんだけど」 真っ正面に言われて少し恥ずかしくなる。 「帰りに何か食いたいもんあるのか?」 「ちょっとここの近くに超巨大パフェがある喫茶店があって一人じゃ食べきれないのあー誰か歌の上手い方のパフェを分けてほしい」 困った困ったとチラチラ見てくる。 少しでも嬉しかった自分が悲しくなる。 「とりあえず。今日ここのバイト終わったら行くか」 ありがとう?と抱きついてきたが、普段より露出の高い姿にやられると少し女を意識してしまい早くこのストリップ劇場から逃げ出したくなった。 あと持ち場が2講演あるから1時間後に合流すると約束して俺と純はお先に、その超巨大パフェがあるといわれる喫茶店に向かっていった。
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