set off

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「うわーぁぁぁ、疲れたわぁぁぁ」 5曲こなした後、精神はすり減りもう横になりたかった。 「あんたね、5曲で燃え尽きてたらワンマンで出来ないでしょ」 控え室に戻るとせっせと手売りの為の準備をする。 CD の売り子を由美に頼んでいるため、出演が終わったら急いで代わってあげなければならない。 「今日のliveよかったよな?」 水をぐっと飲み込み天井を見つめる。 「感傷に浸るのは早いんじゃないか」 純が肩を叩く。 「俺達はベストを尽くした。後はCD 売りまくろうぜ」 「ああ」 気が重い。 客の反応が怖い。 「君は本当にメソメソしてるなぁ」 販促の準備を終えた優歌が俺の横にきた。 「もしさ、あんたのCD が売れなくても。 これだけは覚えていてほしい、いつまでも私はvvands の大ファンなんだと」 真面目な顔だった。多分彼女もある程度覚悟しているんだ、売れ方次第でのvvands の進路を・・・ liveハウス出入り口、ステージの真逆に物品販売スペースがある。 観客はステージに夢中でガラガラの状態だ。 「おっ疲れー。何よかなり盛り上がったじゃない。 あんたらのliveあと13枚売れたよ。」 3人は顔を見合わせる。大丈夫確かにファンは増えてる。 しかし、まだ目標の半分も売れていないことに不安の影がかかる。 「まだ、これから買いに来るはずさ」 大丈夫と自分に言い聞かすように明るく振る舞う。 「あっ、さっきlive出てた女の子じゃん」 前のステージが終わり次のバンドが準備する間のドリンクタイム。 ちらほらと出入り口付近に客がやってきて、物販スペースの僕たちに目をやる。 「すいません。写真いいですか?」 「今度いつやりますか?かっこよかったです。」 「お姉さんカッコよかったよ。1枚ちょうだい」 一人の客が声をかけてからそれに続いて多くの人が来てくれた。 「ありがとうございます。ありがとうございます」 一人一人買ってくれた人に僕ら全員握手を交わした。
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