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「一佐?」
真っ白な空間に僕たちは居て、一佐は僕に目もくれず背中を向けて歩き出した
…珍しいな、一佐が機嫌を損ねるなんて
基本大らかな彼は何をされても大体のことは笑って許してしまうのに
何となく不安になって、早足に彼を追いかけた
「一佐…一佐!」
彼は何も答えない
こんなに早足で追いかけているのに彼との距離は離れていくばかり
「一佐!!」
思いきり叫んだ
すると、彼が後ろを振り向く
ああ…やっと
「お父さんっ!」
ーーえ?
僕の陰から小さな男の子が飛び出して、一佐の足元に抱き着いた
彼はそれを抱き上げて優しげに笑った
「蛍!!」
ぱちり、と目を開くと焦ったような顔をした一佐がいた
思考がぐっちゃになって、ただ瞬きを繰り返していると一佐はほっとしたように溜息を吐いて、僕を抱きしめた
微かに開いたカーテンから差し込む朝日
…夢だったのか
ベッドの中で震える体を力強く抱きしめられている内に震えは収まってきた
「嫌な夢でも見た…?」
ふるふる、と頭を振って一佐の胸に体を寄せた
胸の内で膨らんでついに夢にまで見てしまったアレは、とても言えそうになかった
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