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「蛍さん。」
こんばんは、と言って桜庭佑一はベランダの扉を開けた
追い出すどころか迎え入れてくれるようだ
彼が言う友人への対応としては当たり前なのだろうが
部屋に入ると温かい空気が僕を包み込んだ
「立ってないで座ってください、紅茶を淹れますから。」
言われるままに座った僕に向けられた微笑
ああ、本当に始まってしまったらしい
僕たちの奇妙な友人関係が
「あの」
「？何でしょうか。」
「貴方は………僕が代わりに淹れますよ、紅茶。」
僕は適当に誤魔化して彼の隣に立った
客人だなんだと言って中々避けようとしなかった彼をなんとか退いて紅茶を淹れた
「…美味しい。」
一口飲んで驚いたようにそう口にした彼に笑いを漏らす
「次来たときには紅茶の美味しい入れ方をお教えしましょうか。」
来るたびに飲んでいた彼の紅茶は美味しくなかった
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