第1章

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斎藤は幼い頃から両親に"一流の大学を出て、一流の企業に勤めれば一生安泰だ"と教えられていた。 だから人並み以上に勉強したし、就職活動も力を入れた。 しかし、斎藤は気付いた。 現在の日本を考えるとこの親の教えは迷信でしかない事に。 現在の日本では、毎年1万社以上もの会社が倒産している。 日本中で名の通った大手企業でさえ、大赤字を抱える企業も増えてきた。 斎藤の会社だって絶対に倒産しないという保証はない。 次に個人の生涯賃金で考える。 斎藤の親世代の平均生涯賃金は、3億円以上。 ところが現在は2億円~2億5千万くらいしかない。 そして一生涯でどれだけ支出があるのかというと、一般的なライフイベントがあり、ごく普通の生活水準でも3億円は軽くかかってしまう。 支出をかなり抑えなければ赤字になってしまうのだ。 サラリーマンとして働くという事は、今後の人生の約半分の時間を会社に拘束される。 人生の半分を拘束されても、普通に生活して行くのが難しい時代になっているのだ。 これは多くの人が見落としガチな"サラリーマンのリスク"だ。 何故多くの人が見落としてしまうのかというと、日本での老後が生活が年金と退職金で賄われている為だ。 一生懸命働いていれば、老後は何もしなくてもお金が入ってくると思っている人間は多い。 しかし、少子高齢化が進むにつれ 年金制度は崩壊寸前。 現在ですら、生活に十分な年金が貰えない人が増えているのに、斎藤世代が老後十分な年金が貰えるとは到底思えない。 そうなると、頼みの綱は退職金だが、これもあてにはならない。 先にも述べたように、企業のほとんどが業績は悪化している。 多額の一時金を支払わなければならない退職金は、減額するか、カットしてしまう企業も出てくるかもしれない。 そうなると、老後の生活もままならなくなり、老体に鞭を打って働く羽目になる。 そのような未来が来るのがわかっているなら、他人の歯車で、決められた時間、決められた仕事を決められた金額で働くより、老後や将来を見据えて、欲しい金額を稼ぐ為に、独立してチャレンジする方が、よっぽど合理的な人生の選択なのだ。 斎藤はここ数年迷っていた。 今の会社を辞めて独立するべきかどうか。 しかし一歩踏み出せずにいた。 独立するということは、今まで信じで努力してきたものを否定してしまうと斎藤は考えていたからである。
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