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なにがあったのか、それを知る術はないが。一億円を手に入れた男がいたんだ。
彼は借金をしていたわけだが、ちょうど、今ワタシが立っているところで、彼はそれを聞いた。自分が一億円を手に入れた、ということをね。
彼はそれを不審に思った。
彼は、宝くじを買ったわけでも、株に成功したわけでも、親族の遺産が入ったわけでもなかった。ただ、いきなり、一億の金が自分のものになったと聞かされたんだ。
いや、正確には、彼の奥さんからの電話で、一億円が手に入ると聞かされたんだ。ちょうどこの、交差点の真ん中でね。
彼は、立っていた。
呆然として、何にも気付かずに。
最初に言った通り、ここは交差点。それも、事故多発地帯だ。
彼はそれから間もなく、車に跳ね飛ばされた。
ひき逃げで、犯人はまだ、捕まっていない。
余談だが、彼の家族は、彼が死んだことで手に入ったお金で借金を完済し、
今は静かに暮らしているという
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