第1章

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なにがあったのか、それを知る術はないが。一億円を手に入れた男がいたんだ。 彼は借金をしていたわけだが、ちょうど、今ワタシが立っているところで、彼はそれを聞いた。自分が一億円を手に入れた、ということをね。 彼はそれを不審に思った。 彼は、宝くじを買ったわけでも、株に成功したわけでも、親族の遺産が入ったわけでもなかった。ただ、いきなり、一億の金が自分のものになったと聞かされたんだ。 いや、正確には、彼の奥さんからの電話で、一億円が手に入ると聞かされたんだ。ちょうどこの、交差点の真ん中でね。 彼は、立っていた。 呆然として、何にも気付かずに。 最初に言った通り、ここは交差点。それも、事故多発地帯だ。 彼はそれから間もなく、車に跳ね飛ばされた。 ひき逃げで、犯人はまだ、捕まっていない。 余談だが、彼の家族は、彼が死んだことで手に入ったお金で借金を完済し、 今は静かに暮らしているという
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