自分自身への告訴

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弁護士のラウル氏は、頭を抱えていた。 こんな案件など、もちろん扱ったことがない。 いや、これまでの歴史においても、初めてのことだった。 「訴えたいんです!」 客は勢いのある口調で言った。 「どうしたというんですか?」 ラウル氏は相手をなだめるような語尾の切り方をした。 「あいつのせいで、私は多くの被害を被っているんです」 客の男は、余程我慢がならないといった感じだった。 「会社への遅刻、無断欠勤、上層部に対する反発、仕事中のサボり・・・。私の会社での立場は悪くなる一方です」 「今の話だと、他の人の会社での仕事態度についてだと思うんですが。それだと、あなたにはあまり関係がないことだと?あなたはその人の上司なんですか?」
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