第1章

13/126
前へ
/126ページ
次へ
 いわれるままボクは、入り口に近いほうのソファに腰を下ろす。高級そうなのは見た目だけではないようで、このソファはなかなかいい座りごこちだ。でも、何か今までの教育相談などでは感じなかった、得体の知れない緊張感がこみ上げてきたぞ。なんかイヤな感じだ。それに、こんな小娘に敬語を使うのは、なんか妙な感じだが、思わず敬語で話してしまったぜ(まいったまいった)。  しっかし、改めてじっくり見ると、なんてすごい美少女なんだ。白く透き通った肌、大きく黒い瞳、綺麗に通った鼻筋、腰までありそうな真っ黒いしなやかな長い髪。顔は驚くほど小さい。スタイルはわからないが、胸が大きいようには見えなかった(そんなにじっくり観察した訳じゃないけどね)。あまりにも整った顔つきに、神秘的なものを感じて、ボクはちょっとゾクっとした。ただ、ちょっとふっくらした頬が、少女を幼い印象にしているのかもしれない。  格好は女の子っぽくない。黒い厚手のデニムっぽいスラックスに、膝まである黒い長い薄い革ジャンパー。底の厚そうな茶色のトレッキングシューズを履いている。部屋の中はクーラーが程よく効いているが、この季節の服装ではない(室内で皮ジャンパーを着てるなんて、真冬でもあるまいし)。無地のトレーナーは映えるような赤で、革ジャンパーの袖口からはみ出た手は白く細長く、とっても小さい。  たとえて言えば、ソファに置かれた等身大の人形か、かなり大き目のフィギュア・・・そんな印象だ(なんか生き物のような感じがしない)。  少女はにこりともしない。眉の一つも動かさない(さすがに瞬きはしている)。しかし、めんどうくさそうという風でもない。とにかく無表情なのだ。まるで、能面を着けているかのようだ。  やばい、かなりドキドキしてきたぞ。うーむ、これは、めったに見ない超美少女を目の前にしたからか、霊媒師に騙されそうな予感がするためか、どっちのドキドキだ?  どっちにしろ、とりあえずは、この少女のペースに巻き込まれつつあるのは確かなようだ(恐れていた展開だ)。           三  そして少女は口を開いた。  「キミは学校へ行っていないそうだな」  は?あ、こんな小娘からもお説教か。ボクの緊張は一気に溶けた。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加