第1章

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 へっ、天狗様だか、天神様だか知らないが、ボクの何がわかるというのだ。こんな小娘が相手じゃ退屈しのぎにもならないだろう。霊能力なんて暴くまでもなく、絶対インチキだ。適当に話してとっとと解放してもらおう。この場所からなら歩いて帰れるから、昼食は家だな(母が用意していなかったら、インスタントラーメンでいいや)。  「はあ、ここ最近休んでいます」  ちょっと長い休みだけどね(おいら、陽気なっ不登校っ)。  「キミを観察させてもらったが、一見したところ、だらしなくて不登校をしているようには見えない。学校を休んでいるのには、何らかの別の理由があるのだろう」  はいはい。どーせ、口からのでまかせだろうが、無責任にてきとーなことをよく言うよ。  しかし、この抑揚のない冷静な話し方、やる気のない数学講師の時間稼ぎの授業じゃあるまいし。声はなかなか可愛いんだけどなあ(ボクの好みだ)。  「不登校の原因は、いくつか考えられるが、一番多いのがいじめだという統計がある。もしくはいじめを含む複合型だ」  これも、ボクの母からの情報なんだろうな。  さて、悪霊払いの祈祷はいつ始まるんだ?あんまり珍妙なのはやめてくれよ。笑っちまったら大変だからな。でも、この美少女が無表情のまま神がかりになって呪文か念仏でも唱え始めたら、ちょっと怖いかもしれない(臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前なーんてね)。  そんなボクの空想とはお構いなしに、少女は勝手に話し続けた。  「いじめにあっては、学校に行くのが嫌になるのは当然だ。まして、同性ばかりの中高一貫の進学高では、救いになるような事柄も多くないだろう。いじめをするような程度の低い人間にとっては、ストレスを発散するのには弱者を見下すことで自分のプライドを保つのが一番楽な方法だ。だから、いじめる側はストレスの発散こそ感じるが、後悔や反省はない。ストレスが発散された段階で、対象に対する興味は失われているからな」  よく次々としゃべるものだ。ボクの高校での情報も母から聞いていたのか。こっちから色々話す手間が省けて楽だ。前に連れて行かれた教育カウンセラーのおじさんのように、根掘り葉掘り些細なことまで聞かれるよりはずっといい(それにこの子の唇はすっごくきれいな色をしてるし、話し方も好感が持てる)。
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