第1章

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 将来は、できればアニメーション関係の仕事がしたいなーと甘ちゃんな事を考えている今日この頃であるが、実はそう思い始めたのはここ最近の話で、自分でも学校へ行かない自分への言い訳にしているんだよなーって自覚はしている。  もともと父母が望んだ中高一貫で私立の男子校を受験したのが間違いだった。難関と思われたその学校にボクは偶然にも合格してしまい、進学校での三年間で勉強漬けの状況に耐えられなくなってしまった。勉強をする事自体がバカバカしくなってしまったのだ。だって、よっぽど特殊な職業に就かない限り、二次関数のグラフを使うとか、古代中国の書の達人(ああ、王羲之!)が誰だか知らなきゃいけない訳ないだろう。外国に行く予定もないから英語なんていらないし、森鴎外がなんで現代国語なのか理解できなくたって生活には困らない。昔はパソコンがなかったから、いろんな知識や数式を覚えておかなきゃいけなかったんだろうけどさ。でも正直な話、実は不登校になった本当の理由はもっと深刻なのだが、それも自分では解決できなかったのだよ。  学校に行かなくなって、もう一ヶ月以上だよなあ。最初はちょっと体調が悪く、二・三日休もうと思っていた。それがいつのまにか一週間になり、今に至っている。母の嘆きにも、もう慣れてしまった。父もちょっとは心配してくれているようだが、もともと家庭のことには口出ししないし、ボクのことなど、どうでもいいのだろう。 幸いというか何というか、我が家の両親は共働きなので、祖母が様子を見に来ない日は、モニターに向かってペンタブレットでちょこまか思いついた絵を書いたり、思いついたアイデアをテキストにメモったり。退屈はしてないよ。  教育相談所・教育カウンセラー・NPO団体・学校臨床心理士、あげくのはてには病院の精神神経科まで、母にはあちこち連れて行かれたが、どれも解決になどなりはしない。だって、ボク自身に元々学校に行く気持ちがないのだから、どうにもなりようがないのだ(母が諦めてくれればありがたいのだけど)。 これからどうすればいいのかも、ボクにはわからない。この一ヶ月間学校へ行く勇気も辞める勇気もとりあえずはなく、何も決めることができない宙ぶらりんな状態が続いている。
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