第1章

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 それに、NPO団体の時もそうだったけど、どーせ嫌だって言ったって母に無理やり連れて行かれるのだから抵抗は無駄だし。それに今、色んな意味でボクは行き詰っている。気分晴らしにたまに外に出るのも悪くない・・・かな。  「どう?その『天狗様』に会ってみる?」  断ったらおそらく母は、泣き顔になって懇願するんだろうな。こりゃまいった。  病院には、だまされて連れて行かれたが、ボクも行き先が精神神経科だったので着いてみて驚いた。しかも、母はお医者さんと看護師さんの前で泣き出したのだ。母は誰かのアドバイスでボクが思春期うつ病か何かで、薬を処方してもらえば、すぐに学校に行くようになると思い込んでいたらしい。ところがお医者さんが特に問題ない旨を母に伝えたところ、母はひどく取り乱した。お医者さんも看護師さんもボクも唖然として見ているしかなかった。あれはホント、気まずかったよなあ。 さすがに『陽気な不登校』自認するボクも、母の泣き顔には弱い。あんな母はもう見たくない。問題は、今泣き顔を見るか、その『天狗様』とやらの前で泣き顔を見るかなんだよな。  「うーん、会っても・・・いいかな」  仕方がないから小さな声で言った。  「本当!?」  母が、かん高い声を上げたので、ちょっとぎょっとした。母はすでにその『天狗様』とやらに洗脳されてしまって、信者にでもなってしまったのだろうか。そして、僕も無理矢理、信者にしたてられてしまうかも知れない。  なんだか、かなり危険な感じがしてきた。山にこもったり滝に打たれたり、なんてことをさせられる可能性もないとは言えないぞ。ボクは神社の境内を竹箒で必死に掃いている自分の姿を想像してみた。まさか、そんなことはないだろう。怪しい事をさせられそうになったら、逃げればいいかあ(ハアのんきだね)。  「うん・・・」  「うれしいっ!タッ君、きっとまた、学校に行くようになるわよ」  母は、満面の笑みを浮かべて喜んだ。は?あ、申し訳ありませんが、きっとまた今度もご期待には応えられませんよ。
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