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綺麗に並んだ福沢諭吉と、目があった。
非現実的な目の前の状況に、頭がクラっと揺れる。お札の束の積み木を見下ろし、私は口を開いた。
「弁護士さん……。半分を、両親に渡してください」
「半分、ですね」
「そして残りの半分は……弁護士さん、次の日曜日はお暇ですか?」
「はい?……えぇ、予定はありません」
少し戸惑った表情を見せた弁護士に、私はやっと身体中の力が抜け、ふにゃっと笑った。
日曜日。
弁護士と共に、近所の河原にやって来た。小石が敷き詰められた河川敷を歩きながら、小枝を拾う。
「姉と、よく遊びに来ました」
ひょいひょいと枯れ枝を拾い、一ヵ所に集めた。
姉の遺産の全額の半分を、先日弁護士が両親に届けた。両親から電話があったが、私は姉の意思だからとそれだけ言って、電話を切った。
「こんなもんかな」
「何をなさるんです?」
弁護士が仕事用のスーツのまましゃがみ、枯れ枝の山を見つめる。
私はポケットからライターを取り出し、持ってきた新聞紙に火をつけ、枯れ枝に火をいれた。
そして川で洗ったさつま芋を、濡らした新聞紙とアルミホイルでくるんで、火の中へ。
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