貯金成功一億円! なんて、気付いたらゼロが増えてた。

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あと五つ。ひとつ手に取り、あと四つ。 「これだけでも自由に使えばいいのに、なんて頭の中では声がします」 「何故、燃やすんです?」 弁護士の問いはもっともで、でも私の中でもこれは決定事項だった。 「お芋が、美味しくなるからです」 まったく間抜けな話だし、きっと誰も理解しない。たぶんこれはあの面倒臭がりの姉の戯言だったんだろう。 「このお芋は、近所のスーパーで一本150円でした。特に安売りでもなかったし、時期にも少し早いから、特別安い訳ではありません」 弁護士はお札を火にくべるのをやめていた。 「五本も買ってきちゃいましたよ」 私はやめない。最後のひと束を掴み、まとめて火の中に投げ入れた。灰になりきれなかった紙幣の欠片が、風に舞う。 「五本で750円のお芋が五千万の紙幣で焼かれるんです」 「燃えてしまいましたね」 いいんです。これが姉の意志。そして、私が決めていた使い方。 「とても"価値"のあるお芋を、大切な人と食べなさいと、姉が言ったんです」 でも、両親に感謝を忘れてはいけない。だから半分は両親へ。 私はひとりでも、生きていけるから。
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