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思考を読む能力も持ってるんじゃないですかね。それならしゃべらずに会話できるからラクなんだけどな。
「会話というのは自分の思いや考えをのべるだけではなく、相手との信頼関係を築いたり、語調によって心情などを察するためのものよ。ラクだからといってその行動を省いてしまったら、私たちもう別れるしかないわね。はい、ここに名前と捺印お願いね」
「えっ、私たちって結婚してたの?」
「ええ。私があなたを調教してたときに、どさくさに紛れて」
記憶がない。いやきっと嫌な記憶だったから脳が勝手に消去したんだ。
私はみゃーこちゃんから離婚届を受け取ると、名前を書きなぐる。捺印はないので勘弁してほしい。というか本当に提出するわけじゃないからそこまでする必要はないはず。
「そうね、婚姻届を出しに行ったとき受付の人に頭おかしい人を見る目で見られましたわ」
提出しには行ったのか。何考えてるんだこの女は。
そんなこんな下らない会話を楽しんでいる間に、拠点の設置は完了して後はご飯が炊けるのを待つだけである。
「はぁ、さっそく来たわね」
呆れ顔がこんなにも似合ってしまうみゃーこちゃんはたぶん普段から呆れることが多いんだろうな。ってなにが来たの?
私がみゃーこちゃんの発言に呆けた表情をしていると、後方の木々から爆発音が聞こえてくる。
「さて、まんまと罠に引っかかった馬鹿を拝みに行きましょうか」
「あー、そういうこと」
どうやらさきほど張った罠に誰かかかったらしい。まぁ、火も起こしてるし、襲われるのは当然か。というか相手を誘い出すために火を起こさせたと考えるのが正しいか。みゃーこちゃん策士だね!
「だいたい少し考えれば火を起こして煙を立てているなんて罠だって分かるようなものを、ほんとうに馬鹿なのかしら」
相手が罠にかかって心底嬉しいらしい。飛び切りの笑顔ですよこの子。
音のしたほうへ向かい、誰が罠にかかったか見にいった私たちだが、そこで後悔することになる。
ああ、変態が釣れてしまったと。
「やっぱり我が愛しのあーちゃんでしたか」
こいつ煙に釣られてきたわけじゃなく、私の存在を感知して匂いでここまで来たんじゃないだろうか。この変態ならやりかねない。
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