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「山田くん!何してるの!?ドアを壊してよっ!早く!」
「え…?だってそれはさぁ…」
「何!?それでも男!?ねぇ?男ならぶつぶつ言ってないで、行動で示したらどうなのっ!?」
「お、おう…!わ、分かったよ!おれの真の姿を見せてやるよっ!」
タッタッと二足、助走を付ける音。グシャッという激しい音、木が壊れた音。山田が、ドアを突き破り浸入してきた。
山田は中学までラグビー部に所属しており、今は細身だが、その頃は筋肉隆々とした男だったと聞く。彼自身はその事を話したがらないが、同じ中学の同級生から聞く限りはかなり有能な選手であったらしい。だが、メンタル面に少々欠陥があり…というよりメンタルが非常に弱かった。勝っているうちは良いのだが、負け始めると時期に意気消沈してしまい、まるで別人のようになってしまうのだという。
つまり、山田が黒川泉に逆らえないのはそういう理由によるものだったのだが、亜美ちゃんの激励?により山田心に火が点いたのであろう。力だけならば、黒川泉を凌ぐと思われる山田だが…。
「山田。何をしているの?それは器物破損よ」
「え?あ、おれは、おれは、その…だなぁ…」
山田心は一気に消沈してしまったようだった。
「泉ちゃん!貴女は監禁罪じゃないの?前の時は哀川くんに穏便に済ませて欲しいって頼まれたから、あれで終わったけど、今度こそただじゃ済ませないよ」
山田の後ろからひょっこり出てきた亜美ちゃんが、可愛い形相で黒川さんに食いかかっていた。トイレに監禁されていた僕を救出したのも亜美ちゃんだった。
放課後、もう小便に行きたくて堪らなくて堪らなくて震えている。というか痙攣していた僕を変わらず微笑んでいる悪魔黒川泉であったが、トイレに入ってきた女子生徒により事態は解決した。
「ああー疲れたー。もう授業とかやってらんないよー。でもこれも女子生徒の勤めかな?うんうん…お勤めご苦労様でした」
と、隣の個室から独り言を言うのは栗原亜美。今や僕が特別な思いを寄せる人亜美ちゃんであった。はっきり云ってその時までは、栗原亜美はただの頭の軽いちょっと馬鹿な女としか思っていなかった。
山田の幼なじみであり、僕と山田が話していると時々話に加わってくるのが栗原亜美であった。
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