第1章

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「そういえば、山田くんが哀川くん今日は休みだって言ってたなぁ。いつも優等生のように振舞っているのに珍しいなぁ…。ふふ、ちょっと電話してみよっ」  トイレ中に男子生徒に電話するとは不健全極まりないっ。と注意したい所であったが、その不健全さに救われた。   プルルルル…。 「え…?哀川くん…?」 「あ…」   栗原の予想外の行動に一瞬動作が遅れた黒川泉は、僕に一声のみ出させてしまった。 「ちょ、ちょっと。哀川くん!?此処、何処だか分かってるの!?あ…わたし…ちょっと待ってて!聞かないでっ!」  口を閉ざすのを止めた黒川泉は瞬時に僕の耳を押さえた。 「…ふう。…いい?ここは女子トイレ。ここは男子生徒が居ていい所じゃないのよ?今日一日居なかったって事は…もしかしてずっと此処にいたの!?それって犯罪だよ?分かってる?」  概ね分かる。僕も出来ればこのような事にならなければ良かったと思っていた。 「ねえ?なんとか言ってよ!…ああ!もう!」  栗原亜美はタンッと音を立てたかと思うと、壁の上から顔を出して再び口を閉じられている僕と黒川泉を見たのであった。 「…黒川さん…?何、してるの…?」 「貴女に話すべき事は何もないわ。去りなさい」 「な、なによ。そんなこと…」  と、栗原亜美は黒川に口を押さえられて首を横に振る僕を見た。 「…分かりました。黒川さんが何も言わないなら、わたしも貴女に何も言いません。ただ、わたしは今からクラスに戻り、クラスメイトに今見た事態を話します。その後警察に連絡を入れて、男子生徒が女子トイレに監禁されていると話します。ただそれだけです。では…」   予想以上の成果だった…。何て女だろう?栗原亜美!今まで猫をかぶっていたのか…?完璧過ぎる展開だ。これではこの悪魔のような黒川にも為す術が無い!…しかし。 「そう…?だったら行かせる訳にはいかないわね…」  僕を放置して外に出た黒川は言った。扉の外できっと腕を組んでいる事と思う。 「…だったら、どうするの…?」 「そうね…女同士話し合いするっていうのはどう?」 「ごめんなさい。わたし、犯罪者と話したくないの」 「そう、残念、ね…」
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