2人が本棚に入れています
本棚に追加
まずい。そう思い、ドアを開けた時に飛び込んで来た光景は、向かっていく黒川泉を宙に投げ飛ばす栗原亜美の姿であった。
「あ、れ…?」
「黒川さん、そんな道場武術は実践では使えないよ」
宙から落ちる黒川は体制を立て直し再び栗原に襲い掛かる光景を僕は見ている。
「だから…」
そう言って栗原は今度は黒川を地面に叩きつけて、押さえ込んだ。
「黒川さん、そういうの、素人には有効だけどやってる人には通じないよ?…これ以上やるなら、このまま関節を抜きます。これが正当防衛だって証拠は哀川くんがしてくれるし、ね」
そう言って、僕を見た栗原亜美の視線。いつもは明るくおどけたような目が冷たいダイヤモンドのように美しかった。
素敵な女性だ…。此処まで素敵な女が居るのか?こういう女なら、ずっと一緒に居たい。そう思った。
「ああ。当然だ」
にこり。と笑うのはいつもの様。なんていい女だ…。
「と、いうことなんだけど?」
「い、痛…!分かったわ…や、止めるわ…」
「はいっ!良かった良かった!黒川さんが頭良い人で良かったぁ!じゃあ哀川くんっ。行こっ」
「あ、ああ…」
僕は屈託の無い…作り笑顔を作る愛する女に腕を引っ張られて廊下に出た。
「あ、あのさ、哀川くん。さっきの事皆には秘密でいい?」
「い、いや僕だって言いふらされたくない出来事ではあるからね」
「うーん…じゃなくてさ、わたしが言った事や、やった事」
「あ、ああ…」
「黒川さんの事はどうするの?」
「うん…まあ心の迷いという事もあるし、大事にしないでくれるとありがだいけど…」
「ふ、ふーっ!哀川くんがそう言うなら、そうするっ。いやぁー実はさっきああ言ったけど、わたしあんまり友達居ないからさー…そういう事言っても信じてくれる人そんなにいないんだよねぇ~。あははー…」
「そうなの?僕にとっては救世主以外の何物でも無いけれど」
「ほんとー?でも、昔の救世主は人々の迫害を受けて殺されたし」
「昔はね…。今は違うよ」
「そうかなぁ?」
「少なくとも僕はそう思うよ」
「そか。ありがと。じゃあ部活行こっか?」
「あれ、栗原さんって部活入って無かったんじゃ…?」
「え?何言ってるの?わたしも哀川くんと同じ文研だよー。さっき山田くんに誘われたー」
最初のコメントを投稿しよう!