第1章

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  何という僥倖。山田よ、今夜お前の好きな鳥モモ鍋をご馳走しよう。 「そうなんだ。じゃあ行こうか。あ…ちなみにさっき亜美ちゃんがトイレの床に押し倒していたのが文学研究部会長だよ」 「えええええ!?そうなの?」 「あ、うん」 「わたし、会長さんに何て事を…。…っていうか哀川くん、亜美ちゃんて!?」 「あ、いや、山田もそう呼んでるし今日助けて貰って、今日から同じ部活だから敬意を込めた意味の亜美ちゃんだったんだけど、嫌かな…?」 「あ、いや…別にいいっていうか、寧ろ嬉しいっ。わたし、山田くん以外に下の名前で呼ばれた事無いから…」  ん?女友達は親密さが増すと下の名前で呼ぶというが、何か理由があるのだろうか?まあ、そんな事は訊くものではないな、健全な男子生徒ととして。 「ああーそれと会長黒川泉さんの事は気にしなくていいと思うよ。形だけの会長みたいなものだからね。それに亜美ちゃんの行為は完璧だったしね…」 「もう…哀川くんっ。その事は忘れるって約束でしょ?」 「そうだったね、悪かったよ。じゃあ部室に行こうか」 「うんっ」  そう…そしてぺしゃんこになった黒川泉は静かに去って行った…。そういう展開を僕は望んでいたのだが…。 「そう…こうしてまた貴女が立ちはだかるのね…。わたしの愛は単純だわ…。貴女が居なくなれば成就する…」  嗚呼、黒川…。お前は僕の事を何一つ考えていない…。それを僕は愛とは思わないよ。それに、以前の事を忘れたのか?結局その二の舞いだよっ。 「哀川くん」 「えっ?」 「貴方、またこのわたしがこの女に負けると思っているの?」 「…それはそうだろう。前の時だって歴然とした差があったし」 「は?前の時?何の話?」 「山田。貴方は黙っていなさい。…ねえ?哀川くん?わたしは貴方を愛する女。他の女、いえ、人間と一緒にしないでくれるかしら?」  亜美ちゃんから全く視線をズラす事無く黒川さんは言う。亜美ちゃんも無言で、迎える。 「そうね…。では、こうしましょう。哀川くん。今回わたしが栗原さんに勝ったらわたしの事をこれから泉ちゃん…いえ!泉と呼んで頂きます」 「え?そうなの?」 「いいわね?栗原さん?」
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