シノのこと

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コメダコーヒーに着くと、その1年の子はすでに来ていて、ちょっと手を挙げて合図をした。 制服のスカートは相当短めだ。 1年のくせに。 まだ6月だよ? こないだまで中学生だよ? 気合入れすぎちゃう? けど、化粧はそれほどでもなく、まあ、そこはやっぱ新入生っぽいっていうか。 明るそうな子なんだけどな。 何か悩みをお持ちなのか。 詩乃に相談する悩みってなんだろう。 お互いに知り合いっていうわけでもなさそうだし。 「待った?」 詩乃が尋ねると、いいえ、と答えながらわたしの方を見てきた。 「こちらは沙織。西風沙織さん。時々手伝ってもらってるの」 いや、ちょっと待て。 何を手伝っているって? なにもしたことないし。 というか、わたしの名字、西風じゃないのだけど。 言いかけたわたしを軽く手で制した。 そして何事も無かったかのように続けた。 「こちらの1年生の子は、水崎愛理香(ミズサキエリカ)さん。さっき教室で会ったよね?」 会ったっていうか、見かけただけですが。 水崎っていう子も、同じだったらしい。 見た気もするけどわかんないな、と顔が言っていた。 「沙織、座りましょう」 先にわたしを座らせるとボックス席の通路側に詩乃が座った。 3人掛けっぽいシートの真ん中を開けるように座っている。 水崎愛理香は向かい側のシートの真ん中に座っていた。 妙な三角関係? たまに意味も無いことを考えてしまうのだけど、本当に意味はない。 「先に言っておくけど、沙織は聞いているだけだから。今は口を挟まないわ。水崎さんの悪夢を終わらせるのはシノの役目。だから気にしないで話してくれていい」 いきなり無視しろ発言かよ、と心で突っ込んでみる。 でも声には出来なかった。 水崎が真剣な顔だったからだ。 それに電波っぽい発言でクラクラしそうだったし。 「まずは水崎さん。どこでシノのことを聞いたの?」 水崎は詩乃から目を逸らす。困ってるのか? 「ううん、怒ってるとかじゃないから。誰の紹介なのかなって」 水崎はほっとしたように顔を上げた。 「あの、それじゃあ言います。青木佳奈さんです」
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