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「佳奈?そっか、じゃあ・・・」
言いかけて詩乃は先を続けなかった。
水崎も続きを期待していたようだったけれど、何も言わない。
「それで、東雲詩乃(シノノメシノ)っていう人に会いに行けって言われて」
シノノメ?
誰それ?
詩乃?
ハテナマークがたくさん浮かんだぞ。
詩乃の名字は杉橋だったと思うんだけど。
「2-7に行って、詩乃さんいますかって聞けばわかるって」
人違いだった、とかじゃないよな。
でもさっき、わたしのことを西風沙織と言ったことといい、自称シノノメ、という可能性もあるな。
なんのために?
誰得で?
「そっか。佳奈は元気にしてる?」
青木佳奈といえば、去年同じクラスだった。
確か秋の初めぐらいに病気で休みがちになってて、結局冬に入った頃には入院してたはず。
詳しい病名とか知らないけど。
「はい。もう大丈夫だよって伝えて欲しいって言われました」
その時、頼んでいたホットコーヒーが来た。
横を見ると詩乃は長靴型のグラスに入ったクリームソーダを注文していた。
詩乃の表情からは何故この雰囲気でクリームソーダなのか意図を掴むことは出来なかった。
「佳奈は長い間学校を休んでいたから、もう一度1年をやることになっちゃったんだね。でもそれで良かったかも」
「良かった?」
「うん。水崎・・・」
言いかけて詩乃は、ううん、と言い直した。
「愛理香は佳奈と何処まで話した?佳奈と同じ夢を見るんでしょう?」
なんで名前で言い直した?
さっきから突っ込みしたい所だらけだぞ。
「夢の話をしただけです。青木さんと同じ夢を」
詩乃はクリームソーダのスプーンで制した。
「佳奈、って呼んであげて」
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