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ともかく、そんなわけだったから「友人の友人の話」というのに、本当の話は無いというのが定説にすらなっていたのだ。
だから、リコの仕入れたネットの怪談もあまり人気が無く、本当の体験談を必死になって聞いてくるという、やらなきゃいいのにという苦労話も聞いたことがある。
「友人の友人じゃなくて、兄貴の友人。てか、自分で聞いたし。本人から」
「あっそ。まあ、いいや。話してみ」
わたしとしては、せっかく怖い話を聞かないように話をはぐらかしたのに、声が大きすぎて全部聞こえてくるし、と思っていた。
「ネットで支笏湖の怪談っていうのを読んだんだけど・・」
「ネットの話かよ」
「じゃなくて、支笏湖の怪談の話を兄貴の友達に話してたのよ」
「どんな?」
「うん。支笏湖では、いないはずのやつがいるっていう怪談が何故か多いんだって」
「ふーん。なんでだろうな」
「さあ。その辺はわからないんだけど、そういう話をしてたのよ」
辰野っていう男子がリコにそれで?と先を促す。
「そしたら、兄貴の友達が支笏湖に行ったことあるよ、っていうから」
「なんか見たのか」
「見てはいないんだけど、サイクリング部みたいな感じで支笏湖を通ったらしいの。あ、大学生なんだけどね。女子2人と男子3人で。テントとか寝袋とか積んで走ってて、なんか予定より遅くなっちゃって夜になったらしくて」
「夜中に自転車で湖とか怖すぎだろ」
「それで、何故か女子の一人が言い出したんだって。あれ?もう一人は?って」
「ありがち過ぎだろ」
「そうしたら、もう一人の女子も、わたしも一人足りないような気がしてたんだけど、元々5人しかいないよねって」
「それで?」
リコは不思議そうな顔で男子達を見る。
「それだけだけど、怖くなかった?」
「いや、それほどは・・」
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