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夕方になっても雨は降り続けた。
相変わらず雲は灰色でグラウンドには水溜りがたくさん出来ている。
グラウンドの向こうにはすごく背の高い木が並んで植えてあって住宅街からの視界を遮っている。
都会の学校ではなくって、かといって山の中の田舎の学校というほどでもない。
地方都市の外れにある。
地面の割合的には住宅と畑と田んぼが同じくらいの割合で存在していて、劇的なことは何も起こりそうにない退屈な高校。
おしゃれな店も、どこかにはあるのだろうけど、わたしは見たことはない。
遊びに行くのは電車に乗って20分の都市部の方。
逆に20分くらい電車に乗ると山の中へ行ってしまうけれど。
わたしは一人暮らしで高校に通っている。
だからって面白い学校生活をしているわけじゃなくて、こんな何もない街で狭いワンルームに住んでいても何も特別なことなんて起きないと思って過ごしてきた。
「沙織、チャリだったっけ?」
詩乃は自分の鞄から黒い革の手帳を出すと何かを確認しながら尋ねてきた。
「うん」
「そっか。じゃあ近くの方がいいかな。喫茶店とかでいい?」
天気のせいで薄暗い階段を下りながらわたしは折りたたみ傘のカバーを外す。
「なんの話なの?」
「さっき来てた1年の子の話に付き合って欲しいの」
なんでまた?と思った。
ていうか、そもそも詩乃と一緒に帰るのもそれが初めてだった。
「占いだっけ?悩み相談とかいうやつ?」
「そう。これからさっきの子に会うの」
いやいや、待てって。なんでわたしが知らない子の悩み相談に付き合う?
「それは駄目っぽくない?その1年だって迷惑だと思うに決まってるし」
「そうね。でもシノも一人では行きたくないの」
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