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わたしは下駄箱の前で立ち止まる。
そういや詩乃は自分のこと名前で言うんだった、とどうでもいいことを思ったりする。
「じゃあ、行かなきゃいいじゃん」
「いつもは、学校の何処かの教室とかで話を聞くんだけど・・・」
詩乃はちょっと迷惑そうな顔で俯いた。
「学校では話したくないっていうんだもん」
「だからって、相談してるのは向こうじゃん。同じ学校にいるんだし、別にわざわざ行かなくても」
「そういう内容だから・・・」
どんな内容だっていうんだよ、と心の中で突っ込む。
「それに、たぶん、沙織も関係ある話って思うんだよね」
「え?」
なんかしたっけ?と一瞬考えてみる。
1年の子の顔を思い出そうとするが、見覚えなんか無かったと思うけどな。
彼氏を取った、とか?
待て待て、わたし彼氏とかいないし。
ていうか、残念ながらというか、誰かと付き合ったこともないわけだし。
「まあ、来ればわかるって。沙織、他に用事ないでしょ?」
詩乃ってこんなに強引な感じだったかな、と思っていた。
教室での詩乃は地味で目立たない印象が強かったのに。
詩乃は電話を取り出すと手帳のメモを見ながら番号を押した。
ガラケーだった。
「うん。じゃあ、駅前のコメダで」
それから振り向くと、行こ、とわたしの手を握った。
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