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一週間が過ぎた。
これといって特筆すべき事柄は起こっていないけれど、たった一人で生きてきた僕にとって、他人と関わるということは大変だった。
でも、それは充実した毎日であったことに変わりはない。
それが、期限付きの幸福であったとしても。
「どう? やりたいこと、したいこと見つかった?」
もう、一週間が過ぎたのだ。
校舎と図書館の往復しかしていなくて、曜日感覚が多少狂ってしまいそうだったが、ちゃんと一週間が過ぎてしまった。
同じ図書館の、同じ席でお互い好きな本を持ち寄って、僕が女性の話を聞くという、なんでもない日常を過ごした。
「もう、また暗い顔して、だめだよそんな顔しちゃあ」
そうだね。
君が僕を思い出すとき、決まって暗い顔、困った顔ではいけない。
僕は無理矢理だったが笑ってみせた。
笑うなんて数年ぶりだったが、ちゃんと笑えただろうか。
「うんうん、その笑顔だったらきっと大丈夫」
大丈夫?
何を指して大丈夫なのだろうか。
思い出せない。
こんなこと、言われただろうか。
「さぁ、もうそろそろ遅い時間だし、帰りましょう」
僕の戸惑いを感じ取ったのか、話をそこで切り上げて女性は帰り支度を始める。
これで、終りか。
後悔の時が、刻一刻と迫り来る。
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