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一服する間。
和樹の柔肌がいくつもの手に弄ばれ
桃色に染まる様を思い返して。
「理解できないんじゃない。ついていけないんだ」
自分でも珍しく
物思いに耽った。
「ついていけない?」
「一人の人間の中に心は一つか?いや無数に存在する。それこそパラドックス的に。細かい層に分かれた良い心と悪い心が同居して、めまぐるしく入れ替わる。それこそパラパラと本のページを捲るみたいに」
あの子の場合は特にそう――。
「気まぐれで突拍子もなく気性が激しい――えてして覗きたくなるのはそういう人間の心だろ?」
「なるほど。だから覗くことはできても理解できない」
「ああ。流動的な物は捉えておけないから魅力的だ」
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