祈祷冬足奇譚「ダブリン妖精強盗事件」

おいでまっせアイルランド

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ほらー、はい、詰んだ。投了。こんなことなら冬足さんに少しでも、せめてパスポート渡した後の会話とか聞いとくんだった。

could you show me your passport? （パスポートを拝見します）
へ、へゆあー

わたわたしながらパスポートを渡すと、入国審査のおじさん、かなり恰幅のいい優しそうな眼をしたおじさんの顔に「あぁ、こいつ英語苦手だな」という言葉が浮かんだ…気がした。
内容？必死すぎて何を話したかなんて全く覚えていないし、通れたのがたぶん奇跡だと思う。

とりあえず、よかった。拒否されなくて。

「遅い。何を話し込んでたんだ、まったく。」

そして、冬足さんはというともう自分は荷物もとってきてベンチに座り足を組んで文庫本を読んでいた。
案の定、いや期待はしてなかったけど俺の荷物はない。
そして、その文庫本も出国日前日に俺が京都駅前で買ってきた８６７円のやつだ。
この間のも返してもらってないんだけどなぁ
本当、入国するだけで疲れ切ったよ、パトラッシュ。