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「あー…。」
「どうした?朝に蘇って日に速攻焼かれる間抜けなゾンビのような声を出して。」
どんなシチュエーションだよ。と突っ込みたいところだが、俺、佐藤慶にはそんな元気はない。
今年は例年よりは涼しい。とテレビでは美人なお天気お姉さんが笑顔で言う。
だけど、例年より涼しいだけで100%暑く無いわけじゃない。
現に今日の京都の最高気温は34度。
外から聞こえる暑苦しいばかりの蝉の声も加わりとにかく暑い。
しかも、京都とか大阪特有の縦に長くお隣同士がおしくらまんじゅうみたいに密着した建物には窓が二箇所しかない。
しかも、二箇所とも俺から遠い。
今口を開いたら一言目は「暑いだ。」と人の真相心理を見抜くと言う妖怪、サトリじゃなくても容易にわかる。
まぁもっとも、今はきっとそのサトリの方が俺よりも快適な空間にいて、ひたすらパソコンでゲームをすることに勤しんでいるのだから少し複雑な気分である。
てか、何が悪いって俺のバイト先、祈祷物怪相談所にクーラーが無いのが悪い!!
なんでも所長こと祈祷冬足がクーラーが嫌いらしい。
あと、妖怪も割とクーラーが嫌いらしい。雪女とか来たらどうすんだと思うが、こんな季節に出歩く雪女もいないかと思う。
雪女かぁー……どうせいつかは会うことになるんだろうなぁ~…
「はあー、暑い。暑すぎる。冬足さーん、エアコンくらい買いましょうよー、金欠じゃあ無いんだしー。」
ちなみに俺が作業している机は窓から遠い。さらに机に置いてあるのがスタンドライトではなく、行燈。しかも中身が狐火。
暑いんだよ、コンチクショー!!
しかも作業が札作り。失敗すれば割と俺の生死に関わる作業だから全く気が抜けない。
これがないと冬足さん絶対俺見捨てるからなぁ…あー、俺なんて理不尽な職場にいるんだろ…。
「別に必要ないだろ。今年はまだ猛暑と言われる日は来ていない。それに力をいつも無駄にしかしていないお前にはピッタリだと思うが?」
冬足さんの通常運転な毒舌にももう何も言う気も起きない。とにかく暑い。
「そりゃ、冬足さんは良いですよ、自分だけそうやって扇風機の前に陣取ってるですから!!」
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