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そう、冬足さんは自分だけ窓のそばの豪華な創りのデスクに足を乗せ、その横に二台の扇風機を侍らせている。
さらに、玉藻水屑こと大妖怪九尾の書いた最新作にして、俺がこの暑い中四条の本屋まで昨日買いに行った「伏見稲荷大社復讐物語」を読んでいる。
「ふんっ、アルバイトの分際で多くを望むな。耐えろ。」
その憎たらしい綺麗な顔を本から離しもせず、サラリと言い放つ。てか、あれか…綺麗な顔の人間は毒を吐く特性でも持ち合わせているのだろうか。
あと、その本の代金1585円はいつ返してくれるのだろうか。
「ストライキしますよ?」
とりあえず、集中力はとっくの昔に切れているので一度100均で買った筆ペンを置きパイプ椅子の背に背中を委ねる。
「そしたらあれの封印とくからな。あと、お前の正体をリークするから。」
またもや顔も上げずにサラリと言い放つ冬足さん。
どっちも俺の致命的な弱点。ほっっっっっんっっっっっとうこの人になんで俺は弱みを握られてしまったのだろうか。
あの時この事務所のドアを叩いた俺を殴って蹴ってコンクリ詰めにして宝ヶ池に沈めてやりたい。
「.....っがーーーーー」
「おーおー、こき使われてるねぇい。」
俺が声にならない悪態を着いた瞬間俺と冬足さんの間に人影が現れる。真っ黒で一瞬誰かわからなかったが、声と焦点が合ったことで誰かわかる。
「龍さーーーん、龍さんからも言ってくださいよー。」
ふわりと触りこごちの良さそうな金髪に蒼い目でどっからどう見ても外人だけど話し方は古風な日本語の龍さん。
なのに日本の三本指に入るくらい有名妖怪の龍さん。
龍さんは今現在は新京極のカフェでマスターをしている。珈琲を入れるのがめちゃくちゃ上手い。あと、龍さんの作るパスタは絶品だ。
ちなみに俺がこの相談所を知るきっかけになったのも龍さんだったりする。
「何をだぃ?」
「冬足さん、リムジン何台も買えるくらい金持ってるくせにエアコン一台買ってくれないんですよー。」
「冬足は割とケチだからねぇ。まぁそんなに暑かったらうちにおいでよ。アイスコーヒーくらい無料にしてあげるからねぇぃ。」
苦笑いしながらそう言う龍さんに全俺が感動の涙を流す。この人こそ天使だ!!!人じゃないけど!!本当は天使とは真逆の存在だけど!!!
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