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「連絡してみたけんど、向こういま夜やさかいなぁちょっと時間が」
龍さんが言い終わらないうちにプォフォンと言うか…なんとも言葉にし辛い通知音が鳴る。
「何や、早いねぇ。」
そう言いながらスマートフォンを操作する龍さん、そしてすぐにあまり俺には馴染みのないSNSの画面を見せてくれた。
<○月×日>
おっひさー、龍元気?実はさ?、ちょーっとおねがいがあるんだけどー
久しぶりやねぇ、アンディどした?
いやさー、ケルズの書盗まれちゃったw
へぇ?あれ大事なもんちゃうん?
うん、そうなんだよー、使ったことないから知らないんだけどー何かしらあるらしいw
どうするん?
ちょっと知り合いでいい人いないの?ヴァチカンとか頼ったら俺、打ち首ーwww。
まじか、大変なんやねぇ。心当たりはおるから聞いてみるわ。
まじぃー、サンクス!
<今日>
祈祷冬足って言う子が引き受けてくれるて、値段法外やけんど大丈夫?
マジ!もうみつけてくれたん?!マジサンクス!大丈夫大丈夫、大学の予算で落とすからー。
「冬足さん、これって…やばいんですかね?」
「知らん。」
吹き出しに書かれた文面には、とても何千年も生きた生物とは思えない文字の羅列が並んでいる。こんな軽いのでよく大丈夫だな…。
「ちなみにこいつ何なんだ?」
「これやで。」
呆れ返った冬足さんの質問に龍さんはアイコンのピンクにキラキラと星とかハートの散った目のかなり可愛くなった憤怒の象徴、ユニコーンを指す。
・・・ユニコーン?
えっ、この軽いノリ少し酒の入ったおっさんみたいなメッセージを送ってくるのがユニコーン?!
あの憤怒の化身で、真面目が取り柄のイメージが木っ端みじんに崩れ去って風に飛ばされていく。
「このケルズの書というのは、あのケルズの書で間違いないのか。」
ショックを受ける俺とは裏腹に冬足さんは眉をひそめて龍さんに聞いている。
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