2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、ケルズの書ってなんなんですか?魔法書の類?」
「いや、聖書だよ。だが、とても綺麗なレタリングで……確かアイルランドの国宝だよな?……っておい鴉…何鳩が豆鉄砲食らって落ちた後にとらばさみに挟まったみたいな顔をしてる?」
ちょっ、それ確実に鳩お陀仏!
いや、イメージが風に吹き飛ばされきった後でふと気になったことを聞いてみた。もちろん性悪な冬足さんが答えてくれるわけはないと思っていたから逆に驚いてしまったわけだ。
そして俺がそんな素朴な疑問を抱いたために言葉上ではあるが尊い鳩の命が失われた。
……素直にググればよかった。
「……次は鳩じゃなくて手頃な鴉を例えにしたほうがいいか?馬鹿鴉。話の腰を折るのも大概にしろ。」
「俺何も邪魔して「存在がすでに邪魔だ。オカマ」否定はできませんけど、存在まで否定しないでください!」
「へーわやわぁー。」
二人で言い合う後ろで龍さんはどこから出してきたのか謎な麦茶を啜っていた。
「蛇、俺にも一杯くれ。」「龍さん、俺もお願いします。」
「はいはい、じゃあ一時休戦して休憩しよか。三条の鯛焼き買ってきたから。冷めんうちに食べぇ。」
わーい、この鯛焼き屋の鯛焼きは尻尾にもちゃんと餡が入ってるし、頭も勿論たっぷり詰まってるから最後まで美味しいんだよなぁ!
龍さんが出してくれた袋から鳴門金時の鯛焼きを取るとモフモフと頬張る。
あぁ、至福ー。
「で、話を戻すと国宝を盗まれるなんて並大抵起こることじゃないし、起っても困る。何があったか少しでも聞いてないのか?」
冬足さんも鯛焼きにかぶりつく。ただ、味わうって言葉を知らないのか一口で半分以上の鯛焼きが彼の胃に収まった。まぁ、その時に僅かな抵抗で冬足さんの口の中に熱い餡を残していったらしく、一瞬眉をしかめるのを見た。
ちょっとだけ……ザマァ。
ヒュッ
「……もしかしなくても読心術マスターしてますよね?冬足さん。」
「鴉ってのは白い羽を焼かれても反省しないらしいな。」
飛んできたペーパーナイフ本日2本目を何とか避けて言うと、呆れた目でそう返された。
最初のコメントを投稿しよう!