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「そしたらな、お母さんはその十万円を突き返してきたよ。学生が無理をしないでください、と言ってね」
「お母さんらしいね」
「なので、一万円だけ入れることにした。その後毎日通ったよ、お母さんが募金活動をしている場所にね」
「お父さんらしいね」
「そして、募金総額が二十七万円になったところで、ようやくお母さんをゲットしたというわけさ」
「そ、そっか……なんだかロマンチックなお金の使い方だね」
「そうだろそうだろ。ラブアンドピースに溢れたお話だろう?」
「それで、その……残りのお金は?もしかして、まだ残ってたりとかは……」
「ごめんな、ほとんど使っちゃって、それほど多くは残ってないんだ」
「え、何?何に使ったの?」
「この家と土地、さ。両親のいないお父さんとお母さんが、こんな家をローンなしで買えたこと。子供に余計なものを残さないでおけたこと、本当に幸せに思うよ。あの時、気まぐれで宝くじを買って本当に良かった」
「そっか……うん、ありがとうお父さん。ありがとう、宝くじ。夢を語る前に、まずは買うことだね。買わなきゃ、宝くじは当たらないもんね!」
そして、お父さんは最後に小さな声で言ってくれた。
残ったお金は、私の嫁入りの時のためにとっておいてあるって。
それは、私が知る限り最も幸せなお金の使い方でした。
fin.
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