第一話 新天地は海港中学

4/50
前へ
/201ページ
次へ
「四階建てなんですね」  同じ感想を持ったのか、母が先に四階建てであることを言葉にしていた。 「あ、はい。一年生の教室が四階、二年生の教室が三階、三年生の教室が二階と一階になっています。あとは各階に副教科用の特別教室があります。校長室や職員室は二階、保健室は一階となっています」  校舎見取り図を言葉で説明してくれた山本先生に続いて二階へ。その間、頭の中にあったのは以前の学校の校舎見取り図。第一校舎と第二校舎があって三階までだったことが違うが、学年ごとに階を分けているのは同じだった。これはどの学校も同じなのかもしれない。 「こちらが職員室になります」  案内された職員室に入ると、書類だらけの教員用の机が数多く並んでいた。しかし他に人の姿は見当たらない。物音一つしない静かな職員室の片隅にあるソファーとテーブル。そのソファーに腰掛けて待つように言われた。 「今は体育館で入学式兼始業式中なので、もう少しお待ちください」  教職員が出払っている理由は入学式と始業式が行われている最中だから。そう言われて山本先生のスーツ姿や胸元の小さな花に納得した。  職員室の壁にカレンダーがある。今日に日付は、前の学校でも始業式と入学式が行われる日だ。かつてのクラスメイト達も今この瞬間、あの体育館にいるのだと考えていると、職員室の外がガヤガヤと騒がしくなってきた。すると扉が開き、教職員と思われる人達がぞろぞろと職員室へ帰ってくる。 「いやぁ、最近は中学デビューだからと金髪に染めてくる子が減りましたな」 「教頭先生、それはいつの時代の話ですか?」 「最近の子は大人しく見えて裏の顔がわかりにくくなっているから要注意ですよ」 「特に中学生くらいからネットいじめが急増するそうですからね」 「一発ひっぱたいて終わりだった時代が懐かしいですね」  年の差のある教師の一団。その全員がスーツを着て、胸元に花小さな花をつけていた。先生達は話をしながら自分たちの机に散らばっていく。その後からも続いて様々な先生が入ってきた。 「あ、教頭先生」  山本先生の声に反応したのは細くて小柄な五十代くらいの男性。見慣れない七三分けと眼鏡が強烈で、一目でこの人が海港中学の教頭先生であることを覚えてしまった。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加