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「眠かったわ。あの生活安全課の課長、警察署の課長やったらもっと短くわかりやすく話せっちゅうんや」
あくびをしながらズカズカと職員室の奥へ。教頭先生のところまでやってくると、警察署の名前が印刷されている封筒を渡す。
「これ、頼むわ」
教頭先生に封筒を渡したヤクザの男、ならぬ毛利先生。そのまま自分の席に行くのかと思いきや、来客用のソファーのところへ行く。
「なんや、ワシの指定席は使用中か。なら、しゃーないな」
来客用のソファーを指定席と言った毛利先生は、そのまま教員用の机に備え付けられている椅子に腰掛ける。腰掛けた瞬間「久しぶりに自分の席に座ったわ」と笑っていた。
「じゃあ行こうか、伊野部君」
「……あ、は、はい」
言動があまりにも強烈すぎる毛利先生を見て、呆然としていた。浜中先生が声をかけてくれなければそのまましばらく棒立ちだったかもしれない。
職員室を出て廊下を行き、階段を上って二年生の教室がある三階へ。
「そうだ、伊野部君。僕は剣道部を受け持っているんだけど、君は何かスポーツをしていたのかな?」
「はい、バレーボールを」
バレーボール。そう言った時、浜中先生の足が止まった。
「前の学校では男子バレーボール部に?」
「はい。小学生の時は地域のクラブで、中学に入ってからは部活でやっていました」
「うーん、そうかぁ」
浜中先生が再び歩き始める。一緒に歩く浜中先生の顔が少し困っているようだった。
「えっと、バレーボール部だったことが何か?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
少しの間を置いて発せられた浜中先生の次の言葉。それは今回の転校をさらにがっかりさせるものだった。
「うちのバレーボール部、女子だけで男子はないんだ」
前の学校で一緒にバレーボール部として頑張った戦友達。彼らと試合会場での再会の約束は、早くも暗礁に乗り上げてしまった。
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