一億円が飛んできた

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一億円が飛んできた

小説を読んでいて、少し眼が疲れたようだ。 癒そうと、出窓の外をぼんやりと眺めていた。 すると、何かが飛んできた。 まだよく見えない。 なにか、四角いもののようだが。 翼らしきものが見える。 上下に動いているようだ。 四角いものが、横に細長いので、翼の動きが滑稽だ。 今ならはっきりとその全貌が見える。 箱ではなくて、何かをラップで包んだもののようだ。 その両端に、白い翼がついている。 出窓を開けて、身体を乗り出すようにして見た。 結局よくわからない。 その飛行物体は、真っ直ぐこっちにやってくる。 窓を全開にして、その物体を招き入れてみた。 窓を通りぬけ、フローリングに降り立った物体は、翼の動きを止め、 静かに消えていった。 ラップ状に包まれた物体は、光の反射で、中の様子がよく見えない。 貼り付けてあるものを見つけた。 そこには、 「ご自由にお使いください」 と書いてある。 女文字のように見える。 カーテンを閉めると、その中の様子がよくわかった。 どうやら、1万円札の束のようだ。 さてどうしたものか? 悩むくらいなら、招き入れることもなかったのではないかと思ってしまった。 もし大金が手に入ったとしたら。 私の考えは堅実だ。 基本的には貯金をして、少しずつ足らないときにだけ使う。 ギャンブルとして使うのなら、ローリスクローリターンの毎月配当もののファンドを1000万円分、3口ぐらい購入する。 金融状態が悪化している今の状態でも、10万くらいにはなるだろう。 光熱費と、通信費、家賃くらいは払える。 そうすれば、給料は全て小遣いにできる。 1年ローンで、高級車が買えてしまう。 このようなことを考えたことがあった。 しかし今のご時勢、大金ではあるが、一億円程度だったら、ちょっと無駄遣いしたくらいで、一挙になくなってしまうことは明白だ。 どうせもらえるのなら、十億くらいはくれたらいいのに、と思ってしまう。 さて、ご自由に!と言われても、どうしたものだろうか。 警察に持って行って、「翼が付いてて飛んできました」 なんていえる訳がない。 異常者扱いされるに決まってる。 ありがたく使わせてもらった方がいいと思った。 さて、遣い道だけど。 いろいろ考えたが、どうしても納得が行かない。
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